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ここはすでに、若い別荘所有者の立ち会いのもとに、一度はのぞいたところであるが、いまあらためて見まわしてみても、いぜんとして当惑をおぼえPretty Renew 黑店るばかりだった。床にしろ、壁面にしろ、石でがっしり固めてあって、口をひらく個所があるとは見られなかった。
 ウィレット医師は考えた。この別荘の建築者が、地下室をつくるにあたって、そのまた下に、二世紀以前の巨大な地下獄屋がひそんでいるのを知らなかったことは明瞭である。したがって、そこへの通路の入口は、ごく最近、ウォード青年とその仲間の手で完成されたにちがいない。そこでウィレット医師は、作業にとりかかるチャールズの位置に自分をおいてみた。しかし、この方法では、霊感らしいものが得られぬと知ると、消去法を用いることにきめた。床と壁の全面積を細分し、そのひとつひとつにあたり、疑問の余地のない部分を除去していった。そして最後に残ったのが、洗い槽を前にした小さな台石であった。これは先回訪れたときも目についたが、チャールズがいてはどうしようもなかったものだ。いま、ウォード氏と二人がかりで、ぐと、その上部が、隅のひとつを軸にして、ぐるりと水平に回転した。下に、まんまるな穴があき、鉄の蓋がしてあった。それと見るや、ウォード氏は身をのり出して、鉄の蓋をひっぱった。蓋はかるがるとあがった。が安利、そのとたんに、氏の顔におかしな表情が浮かんだのが、ウィレット医師の目にとまった。ウォード氏はめまいがするのか、からだを前後に揺すっている。暗い穴が吹きあげる濁った空気のせいだな、と医師は察した。
 つぎの瞬間、ウォード氏は失神した。医師はそのからだを支えて、床に横たえさせた。冷水を浴びせ、意識を回復させようと焦ったが、氏の反応は遅々としたものだった。不快な臭気を含む地下からの風にあてられただけとわかっていたが、医師は万一の危険をおもんぱかって、街道までタクシーを拾いに出た。そして、ウォード氏が弱々しい声で抗議するのもかまわず、邸に送りかえす手配をすすめた。そのあとウィレットは、鼻孔に消毒ガーゼを詰め、懐中電燈をとり出すと、単身、新たに見出した地下への通路を調査することに肚をきめた。腐敗した空気の悪臭も、いまはいくらかうすらいで、懐中電燈の光線が照らし出す十フィートほ卜維廉中學どの地獄の入口は円筒状のコンクリート壁で、鉄の梯子が据え付けてある。そのさきは石の階段がつづいているのだが、これは元来、現在の建物よりもやや南にあたる地点で、地上に通じていたと推定されるのだった。