に厚いガラスを使ってあって、バランスが、くずれにくくなっているのです。何度かがんばってみたあとで、ミルドレッドは、とうとうあきらめると、すわりこんで、失望のあまり、なきだしてしまいました。残る頼みのつなは、エセルが、やさしい気持ちになってくれることだけです(でも、エセルには、そのやさしい気持ちというのが、いないのです)。それと同時に、ミルドレッドは、たいへんなことに気がつきました。もしかしてエセルが、自分のやったことをうちあける気になったとしても、ミルドレッドが、まさかフラスコの中にいるなんて、だれも、思いもよらないでしょう。  昼ごはんのあと、二年生が、まじない薬の授業をうけに、実験室にやってきました。モードとイーニッドは、ミルドレッドのゆくえについて、あれこれ話しあいながら、フラスコのそばを通りかかりました。モードのいっていることを耳にしたミルドレッドは、ますます、情けない気持ちにさせられました。モードは、こういっていたのです。 「やっぱり、にげ出しちゃったのかしら、イーニッド。つまりね、こんなにさがしても、ミルドレッドは、どこにもいないし、たいした理由Amway傳銷もなくて、今ごろのこのこ出てきたりしたら、どんなやっかいなことになるか、知らないわけないと、思うのよねえ」 「わたしは、ここだってば!」ミルドレッドは、さけぼうとしましたが、のどから出てきたのは、やかましいガーガー声だけでした。 「なんてうるさいカエルでしょう。こんなカエル、みたことがない」ハードブルーム先生が、おそろしい目つきで、フラスコをにらみつけながら、ぴしゃりといいました。ミルドレッドは、たちまち静かになって、今度は、じっとモードを見つめました。もしかしたら、ラジオの電波のように、空気を通して、気持ちを伝えられるかもしれないと、思いながら。これは、もう少しで、成功するところでした。 「イーニッド」姿を消す薬の材料を、えりわけながら、モードがいいました。「あのカエル、わたしを見つめているわ。さっきから、十分ぐらい、このテーブルから、目を離そうとしないわよ」 「ばかなこと、いわないで」と、イーニッド。「カエルが、人間を見つめたりしないよ」 「だって、あのカエルはしてるわよ。ほら見て!」  イーニッドも、見てみました。その小さなカエルは、明らかに、モードの方を、一心に見つめています。そして、イーニッドに目を移すと、飛びはねながら、むちゅうで、ガーガーなきました。 「モード」と、ハードブルーム先生。「すみませんけど、カエルをフラスコから出して、戸だなの箱の中に、移してくれませんか? そんな声を、午後中聞いていたら、たまりませんから」 「クワックワッ!」ミルドレッドは、抗議しました。「クワックワッ! クワックワッ!クワックワッ!」モードは、たなにそっと近づくと、フラスコに手をのばして、ミルドレッドを取り出しました。  ミルドレッドは、最後の望みをたくして、モードの目を、一心に見詰めました。でも、モードは、この大さわぎを演じているカエルが、自分の親友だということに、気がつきそうにありません。こうなったら、逃げる以外、なくなりました。  ミルドレッドは飛びました。新しい力強い足が、飛んでくれるかぎり、高く飛んで、