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「そんなことは認めないそ!」ラロックは激昂して答えた。「遠い過去に知能を与えた種族にとってふさわしい存在であることを、われわれ人類がみごと証明した暁には──そして、その種族が人類を認めてくれたときには、彼らがずっと、いまにいたるまでひそかにわれわれを助けてくれていたことが明らかになるだろう!」
 ジェイコブは肩をすくめた。 〈毛皮派〉/〈開化派〉論争には、もはや目新しい要素がなにもない。いっぽうは、人類がアフリカ東部のサバンナと沿岸で自然そのものから知恵を勝ちとった存在であり、自力で進化した類い稚なる選民であることを自慢に思.それに対してもういっぽうは、ホモ「サピエンスは──他のすべての既知の知的種族と同じように──伝説に満ちた銀河の黎明期、〈始祖〉の時代にまで遡る、遺伝子的・文化的知性化の連鎖の一部であると言う。
 大半の人間は、ジェイコブのように、どちらの見方についても、慎重に中立的な態度をとっていたが、人類は、そして人類の類族たちは、その決着を興味津々たる目で見まもっていた。じっさい、〈コンタクト〉からこのかた、考古学と古生物学は、新しい趣味として匹く普及していたのである。
 し健康飲食かし、ラロックの議論はあまり新味に乏しくて、かびが生えているもいいところだった。それに、ジェイコブの頭痛も、だんだんひどくなってきていた。
「そいつは非常に興味深い議論だがね」と言って、ジェイコブは少しずつ出ロへ動きだしながら、「それについては、またべつの機会にでも……」だが、ラロックはまだ、言い分を言いおえていなかった。
「あんたも知っているように、宇宙で働く人間には、ネアンデルタール主義派のシンパが多い。地球の船に乗っている連中は、動物の毛皮を好んで着るし、猿のようにぶつくさ言ってぼかりいる! 連中は古き種族を憎み、控えめな態度をとる感受性の高い人々を虐げているんだ!」
 ラロックはパイブの柄をジェイコブに向けてぐっとつきだした。ジェイコブはのけぞってそれをよけ、なおも丁寧な態度をとりつづけようと努力したが、なかなか難しかった。
「そいつはちょっと言いすぎだと思うな、ラロック。きみが言ってるのは宇宙飛行士のことだろう。彼らの選別にあたっては、感情面と政治観の安定靜脈曲張度がまず第一の基準に……」
「はっ! いま自分で言ったことが、あんたはなんにもわかっ