2016年08月


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「ええ、でも――」
「これをしようと決めたのはあなたでしょ。全部一人でやろうとしたのもあなたよ。もうここまで来てしまったのなら最後まであなたの手でやり抜きなさい中藥脫髮
「お願いよ、レディ?ポルガラ」セ?ネドラは必死で訴えた。「人前でしゃべると気持ちが悪くなるのよ。わたしきっと吐いちゃうかもしれないわ」
「たしかにそういうことはたびたびあるでしょうね」ポルガラは穏やかな声で言った。「でも人前でやらなきゃ大丈夫よ」
 それから三日後、ポルガラと王女、それにアローンの王たちを加えた一行は、深い静けさに包まれたアレンディアの森を、廃墟と化したボー?アスターに向かって旅していた。陽のあたる森に馬を走らせるセ?ネドラの心はほとんどパニック状態におちいっていた。いかなる議論をもってしても、ポルガラを承服させることはできなかった。あらゆる涙も役にたたず、ヒステリーすらまったくの徒労に終わった。たとえ王女が死にかけていようと、ポルガラは彼女に突っかい棒をしてでも観衆の前に立たせ冷氣機推介、かれらを説得するという苦役を強いるに違いない。セ?ネドラはむっつりとそんなことを考えていた。すっかり絶望した王女は、今や前途に待ち受ける恐ろしい運命に向かって刻一刻と近づきつつあった。
 ボー?ワキューンと同じようにこのボー?アスターもまたアレンディアの内乱の暗黒のなかで荒廃したまま何世紀も放置されてきたのである。あちらこちらに転がる石は緑色の苔でびっしり覆われ、アストゥリアの栄光と誇りと哀しみをいたむかのような樹木の深い影の下にうち捨てられていた。すでにレルドリンが一行を待っていた。かれの集めてきた五十人ばかりの華美な服装をした高貴な若者たちが、一抹の疑いを浮かべながらいっせいに好奇心にみちた視線を王女に送った。
「申しわけありません、短い期間で集められるのはこの程度しかなかったのです」レルドリンは一行が馬からおりるのを待ってポルガラに詫びた。「むろんもっとたくさんいるのですが、皆ミンブレイトの陰謀だといってきかないのです」
「いいえ、これで十分よ。レルドリン」ポルガラは答えた。「後はこの人たちがたちどころに何があったかを広めてくれることでしょう」彼女は太陽がまだらにさしこむ苔むした廃墟を見まわした。「どうやらあそこが良さそうだわ」そう言いながらポルガラは壊れた壁の一部を指さした。「さあ、いらっしゃい。セ?ネドラ」
 鎧をつけた王女は、チョ?ハグ王が彼女のためにアルガリアから運んできた白馬に兜と盾を取りつけると、辛抱強い動物をひいて震えながら女魔術師のあとに従った。
「あなたの声だけでなく姿も全員に見えるようにしたいのよ」ポルガラの指図はなおも続いた。
「あの一段高い石の上から話しかければいいわ。あの場所は今でこそ日陰になっているけれど、太陽は動き続けているから、ちょうどあいっぱいにさしこむようになるでしょう。素晴らしい仕上げになること間違いなしよ」
 空を見上げたセ?ネドラは、太陽がそこへ行くまでにどれほどの時間がかかるかを思って愕然とした。「わたし、気分が悪くなりそうだわ」彼女は震え声でささやいた。
「それは後にしましょうね。とにかく今は時間がないわ」女魔術師はレルドリンの方を向いた。
「さあ、そろそろ王妃を紹介してもいいわ」
 レルドリンは崩れた壁の上に飛び乗ると、手をあげて観衆を黙らせた。「わが同胞よ」かれは大きな声で呼びかけた。「前回の〈エラスタイド〉で、われわれは世界を根底から揺るがすようなできごとに遭遇した。それこそはわれわれが千年以上にもわたって待ち続けていた瞬間だった。諸君、リヴァの王が帰還したのだ!」
 観衆はいっせいに身動きし、興奮したようなざわめきがさざ波のように広がった冷氣機價格比較

12
記憶というのはなんだか不思議なものだ。その中に実際に身を置いていたとき、僕はそんな風景に殆んど注意なんて払わなかった。とくに印象的な風景だとも思わなかったし、十八年後もその風景を細部まで覚えているかもしれないとは考えつきもしなかった。正直なところ、そのときの僕には風景なんてどうでもいいようなものだったのだ。僕は僕自身のことを考え、そのときとなりを並んで歩いていた一人の美しい女のことを考え、僕と彼女とのことを考え、そしてまた僕自身のことを考えた。それは何を見ても何を感じても何を考えても、結局すべてはブーメランのように自分自身の手もとに戻ってくるという年代だったのだ。おまけに僕は恋をしていて、その恋はひどくややこしい場所に僕を運びこんでいた。まわりの風景に気持を向ける余裕なんてどこにもなかったのだ。 でも今では僕の脳裏に最初に浮かぶのはその草原の風景だ。草の匂い、かすかな冷やかさを含んだ風、山の稜線、犬の鳴く声、そんなものがまず最初に浮かびあがってくる。とてもくっきりと。それらはあまりにくっきりとしているので、手をのばせばひとつひとつ指でなぞれそうな気がするくらいだ。しかしその風景の中には人の姿は見えない。誰もいない。直子もいないし、僕もいない。我々はいったいどこに消えてしまったんだろう、と僕は思う。どうしてこんなことが起りうるんだろう、と。あれほど大事そうに見えたものは、彼女やそのときの僕や僕の世界は、みんなどこに行ってしまったんだろう、と。そう、僕には直子の顔を今すぐ思いだすことさえできないのだ。僕が手にしているのは人影のない背景だけなのだ。 もちろん時間さえかければ僕は彼女の顔を思いだすことができる。小さな冷たい手や、さらりとした手ざわりのまっすぐなきれいな髪や、やわらかな丸い形の耳たぶやそのすぐ下にある小さなホクロや、冬になるとよく着ていた上品なキャメルのコートや、いつも相手の目をじっとのぞきこみながら質問する癖や、ときどき何かの加減で震え気味になる声まるで強風の吹く丘の上でしゃべっているみたいだったや、そんなイメージをひとつひとつ積みかさねていくと、ふっと自然に彼女の顔が浮かびあがってくる。まず横顔が浮かびあがってくる。これはたぶん僕と直子がいつも並んで歩いていたせいだろう。だから僕が最初に思いだすのはいつも彼女の横顔なのだ。それから彼女は僕の方を向き、にっこりと笑い、少し首をかしげ、話しかけ、僕の目をのぞきこむ。まるで澄んだ泉の底をちらりとよぎる小さな魚の影を探し求めるみたいにPretty Renew 美容院。 、少し高くなった石囲いもない。ただその穴が口を開けているだけである。縁石は風雨にさらされて奇妙な白濁色に変色し、ところどころでひび割れて崩れおちている。小さな緑色のトカゲがそんな石のすきまにするするともぐりこむのが見える。身をのりだしてその穴の中をのぞきこんでみても何も見えない。僕に唯一わかるのはそれがとにかくおそろしく深いということだけだ。見当もつかないくらい深いのだ。そゆる種類の暗黒を煮つめたような濃密な暗黒が――つまっている。 「離れないよ」 直子はポケットから左手を出して僕の手を握った。「でも大丈夫よ、あなたは。あなたは何も心配することはないの。あなたは闇夜に盲滅法にこのへんを歩きまわったって絶対に井戸には落ちないの。そしてこうしてあなたにくっついている限り、私も井戸には落ちないの」 「絶対に」 「絶対に」

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