2017年02月

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ゲラン王子は小さな顔にいかめしい表情を浮かべてザンドラマスを見た。
「けさはおとなしいね、殿下」ザンドラマスは皮肉たっぷりに言った公開大學 學位
 子供の表情は変化しなかった。ともに行動するようになって一年余が過ぎていたが、ゲランはザンドラマスにたいして一片の愛情も示したことがなかった。それ以上にいまいましいことに、恐怖もけっして見せたことがない。ゲランは玩具のひとつを持ち上げて、言った。「ボール」
「ああ、そのようだね」ザンドラマスは答えた。そのあと、ゲランの射抜くような凝視がわずらわしかったのだろう、彼女は部屋をつっきって鏡の前に立った。頭巾をはねのけ、じっと鏡に写る自分を見つめた。それはまだ顔には出ていなかった。それはすくなくともほっとすることだった。両手の皮膚の下で渦巻き、きらめく光の点を、彼女は嫌悪の面もちで見た。それから、ばかにゆっくりと衣服の前をはだけて鏡に写る裸身を凝視した。それは広がっていた。そのことには疑いの余地がなかった。乳房も腹もあのまったく同じ渦巻く光の点におおわれていた。
 ゲランがだまって近寄ってきて、かたわらに立った。「星」かれは鏡を指さして言った。
「遊んどいで、ゲラン」〈闇の子〉は命令すると、衣服の前を閉じた。
その日の午後、西へ馬を走らせていた一行の目に、ぶあつい暗紫色の層雲が前方にわきあがり、どんどん高くなって青空をおおい隠していくのが見えた。後方にいたダーニクがとうとう前へ出てきて、ベルガラスに言った。「トスが避難所を見つけたほうがいいと言っています。世界でもこのあたりの春の嵐はすさまじいんです」
 ベルガラスは肩をすくめた。「前は雨に打たれっぱなしだった」
「長くはつづかないそうですが、そうとうひどくなりそうですよ。午前中いっぱい風が吹きまくるはずです。トスの言うことに耳を傾けるべきじゃないでしょうか、ベルガラス。雨と風だけじゃないんです。たいがいはひょうも降るそうだし、その大きさたるやリンゴほどもあるっていうんですから」
 ベルガラスは西の空にそびえる紺色の雲を見やった。そのまん中を稲光がジグザグに通りぬけた。「わかった。どうせきょうはんだろう。トスは近くに避難所があるのを知っているのか?」
「一リーグばかり先に農村があります」ダーニクが言った。「われわれが通過してきたのと同じような状態であれば、だれもいないでしょう。頭をひょうから守ってくれるだけの屋根が残っている家が見つかるはずですよ」
「ではそこへ向かおう。嵐はどんどん移動してくる。ベルディンを呼びつけて、探らせるとするか」ベルガラスは顔をあげた。ガリオンは祖父の思念が空へ伸びていくのを感じることができた。
 一行はかけ足で進卓悅化妝水んだ。強まる風がかれらのマントをはためかせ、不快な冷気ときまぐれな冷たい雨を運んできた。
 人気《ひとけ》のない村を見おろす丘の頂上についたとき、嵐の先頭がさえぎるもののない平原を壁のようにやってくるのが見えた。
「もうじきくるぞ」ベルガラスが風にかき消されまいと声

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ここはすでに、若い別荘所有者の立ち会いのもとに、一度はのぞいたところであるが、いまあらためて見まわしてみても、いぜんとして当惑をおぼえPretty Renew 黑店るばかりだった。床にしろ、壁面にしろ、石でがっしり固めてあって、口をひらく個所があるとは見られなかった。
 ウィレット医師は考えた。この別荘の建築者が、地下室をつくるにあたって、そのまた下に、二世紀以前の巨大な地下獄屋がひそんでいるのを知らなかったことは明瞭である。したがって、そこへの通路の入口は、ごく最近、ウォード青年とその仲間の手で完成されたにちがいない。そこでウィレット医師は、作業にとりかかるチャールズの位置に自分をおいてみた。しかし、この方法では、霊感らしいものが得られぬと知ると、消去法を用いることにきめた。床と壁の全面積を細分し、そのひとつひとつにあたり、疑問の余地のない部分を除去していった。そして最後に残ったのが、洗い槽を前にした小さな台石であった。これは先回訪れたときも目についたが、チャールズがいてはどうしようもなかったものだ。いま、ウォード氏と二人がかりで、ぐと、その上部が、隅のひとつを軸にして、ぐるりと水平に回転した。下に、まんまるな穴があき、鉄の蓋がしてあった。それと見るや、ウォード氏は身をのり出して、鉄の蓋をひっぱった。蓋はかるがるとあがった。が安利、そのとたんに、氏の顔におかしな表情が浮かんだのが、ウィレット医師の目にとまった。ウォード氏はめまいがするのか、からだを前後に揺すっている。暗い穴が吹きあげる濁った空気のせいだな、と医師は察した。
 つぎの瞬間、ウォード氏は失神した。医師はそのからだを支えて、床に横たえさせた。冷水を浴びせ、意識を回復させようと焦ったが、氏の反応は遅々としたものだった。不快な臭気を含む地下からの風にあてられただけとわかっていたが、医師は万一の危険をおもんぱかって、街道までタクシーを拾いに出た。そして、ウォード氏が弱々しい声で抗議するのもかまわず、邸に送りかえす手配をすすめた。そのあとウィレットは、鼻孔に消毒ガーゼを詰め、懐中電燈をとり出すと、単身、新たに見出した地下への通路を調査することに肚をきめた。腐敗した空気の悪臭も、いまはいくらかうすらいで、懐中電燈の光線が照らし出す十フィートほ卜維廉中學どの地獄の入口は円筒状のコンクリート壁で、鉄の梯子が据え付けてある。そのさきは石の階段がつづいているのだが、これは元来、現在の建物よりもやや南にあたる地点で、地上に通じていたと推定されるのだった。

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