2017年04月

 に厚いガラスを使ってあって、バランスが、くずれにくくなっているのです。何度かがんばってみたあとで、ミルドレッドは、とうとうあきらめると、すわりこんで、失望のあまり、なきだしてしまいました。残る頼みのつなは、エセルが、やさしい気持ちになってくれることだけです(でも、エセルには、そのやさしい気持ちというのが、いないのです)。それと同時に、ミルドレッドは、たいへんなことに気がつきました。もしかしてエセルが、自分のやったことをうちあける気になったとしても、ミルドレッドが、まさかフラスコの中にいるなんて、だれも、思いもよらないでしょう。  昼ごはんのあと、二年生が、まじない薬の授業をうけに、実験室にやってきました。モードとイーニッドは、ミルドレッドのゆくえについて、あれこれ話しあいながら、フラスコのそばを通りかかりました。モードのいっていることを耳にしたミルドレッドは、ますます、情けない気持ちにさせられました。モードは、こういっていたのです。 「やっぱり、にげ出しちゃったのかしら、イーニッド。つまりね、こんなにさがしても、ミルドレッドは、どこにもいないし、たいした理由Amway傳銷もなくて、今ごろのこのこ出てきたりしたら、どんなやっかいなことになるか、知らないわけないと、思うのよねえ」 「わたしは、ここだってば!」ミルドレッドは、さけぼうとしましたが、のどから出てきたのは、やかましいガーガー声だけでした。 「なんてうるさいカエルでしょう。こんなカエル、みたことがない」ハードブルーム先生が、おそろしい目つきで、フラスコをにらみつけながら、ぴしゃりといいました。ミルドレッドは、たちまち静かになって、今度は、じっとモードを見つめました。もしかしたら、ラジオの電波のように、空気を通して、気持ちを伝えられるかもしれないと、思いながら。これは、もう少しで、成功するところでした。 「イーニッド」姿を消す薬の材料を、えりわけながら、モードがいいました。「あのカエル、わたしを見つめているわ。さっきから、十分ぐらい、このテーブルから、目を離そうとしないわよ」 「ばかなこと、いわないで」と、イーニッド。「カエルが、人間を見つめたりしないよ」 「だって、あのカエルはしてるわよ。ほら見て!」  イーニッドも、見てみました。その小さなカエルは、明らかに、モードの方を、一心に見つめています。そして、イーニッドに目を移すと、飛びはねながら、むちゅうで、ガーガーなきました。 「モード」と、ハードブルーム先生。「すみませんけど、カエルをフラスコから出して、戸だなの箱の中に、移してくれませんか? そんな声を、午後中聞いていたら、たまりませんから」 「クワックワッ!」ミルドレッドは、抗議しました。「クワックワッ! クワックワッ!クワックワッ!」モードは、たなにそっと近づくと、フラスコに手をのばして、ミルドレッドを取り出しました。  ミルドレッドは、最後の望みをたくして、モードの目を、一心に見詰めました。でも、モードは、この大さわぎを演じているカエルが、自分の親友だということに、気がつきそうにありません。こうなったら、逃げる以外、なくなりました。  ミルドレッドは飛びました。新しい力強い足が、飛んでくれるかぎり、高く飛んで、

0506
ばならなかった。「陛下、いまやわれらの運命がわれらを待っています。われらは別れの挨拶もそこそこに船に乗り、断固たる決意でその運命に立ち向

かわ虛擬辦公室ねばなりません。神々が許されるなら、すぐにでももどってまいります。さようなら、友よ」
「さらばじゃ、リヴァのベルガリオン」王は涙声で言った。「神々が御身と御身の仲間に勝利をお与えくださることを」
「そうなるよう祈ってください」ガリオンはいささか芝居がかったしぐさでマントをひるがえすと、仲間の先頭に立って渡り板を渡った。ちらりと肩ごしにふりかえると、ダーニクが群衆をかき

わけて進んでくるのが見えた。あれを利用しよう。ダーニクが船に乗ったら、すぐにでもすべての索をほどくよう命令するのだ。そうすれば船の手すりごしにいつまでも別れの言葉を叫ばなくて

もすむ。
 ダーニクのすぐあとから荷物を載せた荷車がいくつかやってきた。かれらの手荷物がすばやく船へ運びこまれると、ガリオンは船長と話をしに船尾へ行った。しわだらけの日焼けした顔をした

、白髪まじりの老船長だった。
 西方の船の甲板は白木の板でできていて、たいていは、みがき石で白っぽくみがきあげてあるが、ここの船はそれとはちがい、上甲板もそれを囲む手すりも黒く光るニスで仕上げてあり、真っ

白なロープがきちんと輪になってぴかぴかにみがかれたビレーピンからさがっていた。その効果は、これみよがしともいえるほどこぎれいで、船長が自分の船に強い誇りを持っていることがしの

ばれた。船長自身はややくたびれた青い上着を着ている。要するにくつPretty Renew 冷靜期ろいでいるのだ。陽気なビロードの帽子が片耳の上でいきにかしいでいた。
「これで全部だと思う、船長」ガリオンは言った。「潮の流れが変わらないうちに錨をあげて出航したほうがよさそうだ」
「海に出たことがおありとみえるね、若さまは」船長は賛同をこめて言った。「お仲間もそうだといいんだが。陸の人間を乗せるのはいつもちょっとした試練なんだ。風に向かってげえげえ吐く

のがいい考えじゃないってことがちっとも連中にはわからないらしい」船長は鼓膜が破れそうな声をはりあげた。「ロープを全部はずせ! 出航の用意だ!」
「あんたは島の人間としゃべりかたがちがうな、船長」ガリオンは言った。
「同じだったら、おれのほうがおどろいちまうよ、ルセネ諸島の出身なんだ。二十年ばかり前、ふるさとのあるところでおれに関するいやな噂が行きわたってね、しばらくいな

いほうがよさそうだと考えたんだ。それでここへきた。おれがここへついたとき、ここの連中が船をなんて呼んでいたか教えても信じないだろうな」
「海を行く城とか?」
「じゃ、見なすったんだな?」
「世界の別の場所でね」
「帆をあげい!」船長は乗組員たちにどなった。「なあ、若さまよ」かれはガリオンにむかってにやりとした。「じき呼んでも聞こえないところへきますぜ。そうすれば、あのものすごいしゃべ

りかたからも解放されるわけだ。どこまで話したかね? ああ、そうそう。おれがここにきたとき、ペリヴォーの船ときたら、でかいくしゃみひとつで転覆しちまうほど上が重かったんでさ。そ

のことをここの連中に説明するのに、五年もか


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ミルドレッド・ハブルはカックル魔女学校の二年生になりました。今日は、はじめての登校日です。
 魔女学校の一年間は、ふたつの学期にわけられています。一学期めは、九月に始まって、一月の終わりまで続きます。これは冬学期とよばれていて、そのあと、一月間の楽しい冬休みに入ります。二学期は、三月に始まって、七月いっぱいで終わり。げんみつにいえば、三月のはじめは、まだずいぶん寒くて、冬のような日も多いのですが、二学期は、夏学期とよばれています。二学期が終わったあと、九月のはじめまで、すてきな夏休みが一月、ひかえています。そして、九月から新しい学年の始まりになるのです。
 あれこれ問題をひきおこして、さんざんな一年をすごしたあとで、ミルドレッドが学校にもどってこれたのは、きせきといってもよかったでしょう。ミルドレッドは、まったく運の悪い女の子で、どこに行っても、災難がつきまとって離れないのです。いつも、人の役にたつ、おぎょうぎのいい子でいたいと思っているのに、ひとたび問題がおこってみれば、いつのまにか自分が搬屋、さわぎの原因になってしまっています。まるで、災難を招きよせるとくべつな才能を持っているかのようでした。ふつうのおだやかな行事を、とんでもないドタバタさわぎにしてしまうのも(とくに、早がてんしたときなど)いつもミルドレッドでした。
 ともかく、今年はミルドレッドも、二年生になったことだし、もっとかしこく(とはいえなくても、すくなくとも、前よりは注意深く)なるつもりでいました。そして学校一のふできな魔女だという評判を、なくしてやろうと、決意していました。
 ほうきに乗って、ろうやのような学校の正門におりたったミルドレッドは、さくごしに、霧のうずまく校庭をのぞいてみました。今日ばかりはミルドレッドも早く着いたので、校庭には、まだひとにぎりの生徒しかいません。みんな、ひどい寒さの中で足ぶみしたり、マントにちぢこまったりしています。だいたいがこの学校は、いつも寒いのです。お城のような石づくりの建物ですし、松にかこまれた山のてっぺんに建っていましたから。おまけに、その松林は、びっしり密生しているため、たいへんじめじめしたいん気な所だったのです。、校庭ですごすことが多い生徒たちは、しょっちゅう、かぜをひいたり、インフルエンザにかかったりしていました。
「健康的でしんせんな空気!」体育担当のドリル先生は、校庭に集まってせきをしたり、鼻水をすすりあげたりしている生徒にむかって、いつも、こうわめきます。「体のために、これにまさるものはありません。ベルがなる前に、教室に入ったりしたら、反省文を五百回書かせますよ」
 ミルドレッドは正門を飛びこすと、ものなれたようすで、ふわりと校庭に着地しました。
「まずまずの出だしだわ」と、考えて、まわりを見まわしました。こんなうまくいったんだから、だれかが見ていてくれたんじゃないかと思って。でも、だれも見ていません。人というものは、何かひどい失敗をしたときにかぎって、注目するもので、成功をした瞬間は、決して気づいてくれないのです。
 ミルドレッドは、ほうきの上から、スーツケースをおろしました。ほうきは、つぎの命令を待って、おとなしくただよっています。ミルドレッドが、トラチャンを見ると、トラチャンは、目をしっかり閉じたまま、四本の足をつばさのようにひろげて、つめでがっちり、ほうきにしがみついています。このおくびょうな子ネコは、まだ、飛ぶのがこわくてしかたがないのです。ミルドレッドは、どこかに着くたびに、トラチャンをほうきから、引きはがさなければ

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