2017年06月


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ゆえに街外れにある、周囲に何もないあの墓地には行きたくない。
 シオンはここにいるのだと思いたかった。
 ここなら街が見える。
 俺がいるのも見えるかもしれない。
 だから寂しくないことを勝手に願っていた。
 かがみこんで石と目線を合わせる。
「なぁ………シオン。今日で半年だって。お前はそっちで元気にやってるのか?」
 話しかける。
 無論、返ってくる言葉はない。
 しかし、話しかけたくなる。
 ここにシオンがいるかと思うと、話さずにはいられないのだ。
「俺か?俺は………まぁ、いつもどおり元気にやってる………つもり。そうそう、 この前ちょっとしたいたずらで警察に捕まっちゃってな。おかげで今、ここにチップが埋まってる」
 そう言って俺は右手親指で頭を指差した。
「またそいつがうるさくてな。いろいろ言ってくるんだわ。でもまぁ、そんな寄生虫がいながらも 元気に過ごしてる」
 珍しくサトミは何もツッこんでこなかった。
「ほんとさぁ、毎日毎日大変航天科技で。何とか楽しく過ごして………」
 あー、やっぱりダメだ。
 そう思った。
 結局こんなことをしてない。
 だから正直に。
「………ごめん、嘘。元気に過ごすなんて無理っぽい」
 俺は涙声で。
 つぶやくぐらいの声が精一杯で。
 これ以上の声なんて出せなくて。
「半年なのに………な。まさか………ほんと自分でもビックリだ。は、はは………」
 笑ってみようとしたけど、上手く笑えない。
 もういい加減、半年もこんなことしてたらシオンも天国で参ってしまうだろう。
「ダメだな、もう。………いい加減、お前のことを忘れて、他の女を探そう………って」
「………」
「………なんて思えるわけもなくて………ううっ………」
 涙があふれてきた。
 情けない。
 情けないとは思うけど、でもどうしようもなかった。

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婆は掛け金をまさぐり、ドアを押し開けると、ギルマンに待っているよう合図避孕方法して、黒い開口部のなかに姿を消した。
 若者の過敏になった耳が恐ろしくもくぐもった悲鳴を聞きつけたあと、すぐに老婆が意識を失った小さな体をもって部屋からあらわれ、それを運べとでもいうように、夢を見ているギルマンに差しだした。そうして差しだされたものの姿、そしてその顔にうかぶ表情を見たとたん、呪縛が破れた。まだ愕然《がくぜん》としていて声はだせなかったものの、ギルマンはきしむ階段をやみくもに駆けおり、外の泥濘に出た。走るのをやめたのは、待ちかまえる暗黒の男につかまえられ、喉《のど》を絞められたときのことだった。意識を失うギルマンの耳に、牙をもつ鼠に似た異常な生物のあげる、甲高い声がかすかに聞こえた。
 二十九日の朝、ギルマンは恐怖にわななきながら目を覚ました。目を開けたとたん、何かとんでもないことがおこったことを知った。というのも、壁と天井が傾斜するあの屋根裏部屋にもどって、乱れたままにされたベッドに横たわっていたからだ。なぜか喉が痛み、身を起こそうとしたとき、足とパジャマの裾が泥にまみれて茶色になっているのが目にはいり、さらに恐怖がつのった。目下のところ、記憶は絶望的なほどぼんやりしていたが、少なくとも夢中歩行したにちがいないことはわかった。エルウッドは熟睡するあまり、ギルマンのたてる音を聞きつけてとめることもできなかったのだろう。床の上には入り乱れた泥の跡があったが、奇妙にもドアにむかっているのではなかった。見れば見るほど異様に思えるものだった。自分のものとわかる足跡に加えて、それよりも小さculturelle兒童益生菌な、ほぼ円形をした跡があったのだ――大きな椅子かテーブルの脚がつけたもののようだったが、ただその大半は蹄《ひづめ》のように二つにわかれていた。新しい穴から出てまたそこにもどっている、泥まみれの奇妙な鼠の足跡もあった。ギルマンはまったくの困惑と狂気の恐怖にみまわれながら、よろめく足でドアにむかい、外には泥の跡がないことを知った。恐ろしい夢を思いだせば思いだすほど、恐怖がつのりゆき、二階下にいるジョー・マズレヴィッチが哀れに祈りをあげる声を耳にすると、絶望に襲われてしまった。
 ギルマンはエルウッドの部屋におりていって、まだ眠っている友人を起こし、自分が見いだしたことを話しはじめたが、エルウッドには何がおこったのやら見当もつかなかった。いったいギルマンはどこに行ったのか、どうやって廊下に跡を残すことなく自分の部屋にもどったのか、どうして家具がつけたような泥の跡が屋根裏部屋でギルマンの足跡とまざっているのか、こうした疑問は、まったく推測することもままならないものだった。それにギルマンの喉には、自分で首を絞めたかのような青黒い痣《あざ》があるではないか。ギルマンはそこに手をあててみたが、大きさはまるでちがっていた。二人が話しあっていると、デロシェが立ち寄り、夜がに階上でものすごい音がしたといった。いや、真夜中をすぎてから階段を登った者なんかいるものか――けど、もうすぐ真夜中になるというときに、屋根裏部屋からかすかな足音が聞こえて、そいつが用心深く階段をおりていく音は、どうにも気にいらなかったがね。デロシェはさらにつけ加えて、アーカムじゃいまが一年じゅうで特に縁起の悪いときなんだといった。若い旦那はジョー・マズレヴィッチからもらった十字架をしっかり身につけといたほうがいいな。昼間でも安全じゃないんだから。夜が明けてから、家のなかで妙な音がしたんだよ――急に喉を絞めつけられたみたいな、子供のか細い悲鳴がね。
 その朝ギルマンは習慣にひきずられて授業に出席したが、勉強に身をいれることなどできなかった。恐ろしい不安と予感に満ちる気分にとらえられ、何か破滅的な打撃がふりかかるのを待っているような気がした。正午に大学の食堂で昼食をとり、デザートを待ちながら隣の席にあった新聞をとりあげた。しかしそのデザートは食べずじまいになった。新聞の第一面に掲載された記事を読んだあと、全身の力がぬけてしまい、うつろな目をしたまま、支払をすませてエルウッドの部屋にもどることしかできなかった。
 昨夜オーンズ・ギャングウェイで不思議な誘拐事件があり、アナスタシア・ヴォレイコという田舎者

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